データを遠くへ送るには、決めておくことがいくつもあります。 どちら向きに流すか、どうやって波に乗せるか、 1本の線をどう分け合うか、そして届いた並びのどこからどこまでが1文字かです。 この回に出てくる方式は、どれも「何で分けているか」で見分けられます。
出典:基本情報技術者試験 シラバス Ver9.2 大分類1 基礎理論/中分類1 基礎理論/4. 通信に関する理論
【目標】
情報を伝送するための基本的な技術,代表的な方式の種類,特徴を理解し,担当する事項に適用する。
(1)伝送理論 ① 伝送路
伝送路上でデータがどのように伝送されるかを理解する。
② 変復調方式
デジタルデータを,アナログ伝送路を介して送るために必要な処理である変調,それを受信側で元に戻す処理である復調の代表的な方式の種類,特徴を理解する。
③ 多重化方式
一つの伝送路を複数の通信で同時に使用する多重化について,代表的な方式の特徴を理解する。
④ 誤り検出・訂正
偶数パリティ,奇数パリティなど信頼性を高める技術の仕組みを理解する。
⑤ 信号同期方式
送信側と受信側で送受信のタイミングを合わせるための処理である信号同期制御の代表的な方式の特徴を理解する。
伝送路の向き ── 送れるのは片側か、両側か
先に、ひとつ予想してみましょう
電話では、自分が話している最中でも相手の声が聞こえます。 この伝送のしかたはどれですか。
向きの3つ
単方向 … 決まった一方向にだけ流れる(テレビ放送)
半二重 … 両方向に送れるが、同時にはできない(トランシーバー)
全二重 … 両方向へ同時に送れる(電話)
変調 ── 流れている波を変えて、情報を乗せる
もともとアナログの音声を運ぶために作られた電話回線や電波では、 0 と 1 をそのままの形で流すことができません。 そこで、線にはあらかじめ一定の波(搬送波)を流しておき、 その波を送りたい情報に合わせて変えることで情報を乗せます。これが変調で、 受け取った側が波から情報を取り出すのが復調です。
波の何を変えるか
AM(振幅変調) … 波の高さを変える。0 と 1 を高さの2段階で表す使い方を ASK という
FM(周波数変調) … 波の細かさ(1秒あたりの波の数)を変える。同じく 2 種類の細かさで表すのが FSK
PM(位相変調) … 波のずれ(波が始まる位置)を変える。同じく PSK
波を変えるのではなく、波を数に直すもの
PCM(パルス符号変調) … アナログの波を標本化(一定の間隔で値を読む)→量子化(決めた段階に丸める)→符号化(段階の番号を2進数にする)で 0 と 1 の並びに直す
AM・FM・PM は波の形を変える方式、PCM だけは波を数に直す方式です。 音声をデジタルで扱いたいときに使うのが PCM で、中身は 1-7 で扱った A/D 変換と同じものです。
練習
マイクで拾った音声を、そのままの波ではなく0 と 1 の並びとして記録したい。 使う方式はどれですか。
多重化 ── 1本の線を分け合う
線を引くのにはお金がかかるので、1本を複数の通信で同時に使います。これが多重化です。
1本の線を3つの通信で分け合う(どちらも横が時間)
FDM(周波数分割多重)
^ 周波数
| C ================
| B ================
| A ================
+--------------------> 時間
3つとも、同じ時間に流れている
TDM(時分割多重)
^ 周波数
| A B C A B C A B C A
+--------------------> 時間
同じ帯を、ごく短い時間で区切って順番に使う
分けている向きが 90 度ちがいます。周波数のほうで分けるのが FDM、時間のほうで分けるのが TDM です。
分ける軸は、ほかにもあります。光ファイバで光の色(波長)で分けるのが WDM(波長分割多重)、 携帯電話などで通信ごとに違う符号を掛けて分けるのが CDM(符号分割多重)です。 どれも「1本を分け合う」点は同じで、何で分けるかだけが違います。
誤り検出と訂正 ── 見つけるだけか、直せるか
送る途中で 0 と 1 が化けることがあります。 対策は2段階で、誤りがあると気づく(検出)のと、 正しい値に戻す(訂正)のでは、必要な仕組みの重さが違います。
検出だけができるもの
パリティチェック … 1 の個数が偶数になるよう1ビット足す(偶数パリティ)。奇数にそろえるのが奇数パリティ。偶数個のビットが同時に化けると見逃す
チェックサム … データを数として足した合計を付けて送り、受け取った側で足し直して見比べる
CRC … 決めた式で割った余りを付けて送る。連続して化けた誤りに強い
検出に加えて、訂正までできるもの
ハミング符号 … パリティを何本も組み合わせ、どのビットが化けたかまで絞り込む。2ビットの誤りを検出し、1ビットの誤りを訂正できる
こうした訂正までできる符号をまとめて ECC(誤り訂正符号)と呼び、メモリなどで使われます。 メモリの ECC も、多くはハミング符号を広げたものです。 訂正できるものは検出もできますが、逆は成り立ちません。 そのぶん付け足すビットが増えるので、送り直しが簡単な場面では検出だけにしておくほうが安く済みます。
⚠️ パリティも、縦と横の両方向に付ければ化けた場所が交点として絞れるため、 1ビットの訂正ができます。ここでの話は、1方向にだけ付けた場合です。
練習
宇宙探査機から地球へデータを送ります。送り直しを頼むと何時間もかかるため、 受け取った側だけで誤りを直したい。使うのはどれですか。
同期 ── どこからどこまでが1文字か
線を流れてくるのは 0 と 1 の並びだけです。 受け取る側は、まず1ビットを読む瞬間を送り手と合わせなければなりません。これがビット同期で、 このあとに出てくる方式すべての土台になります。
そのうえで、どこまでが1文字・1まとまりかを合わせます。ここが3つに分かれます。
調歩同期 ── 1文字ずつ、前後を印ではさむ
ST 1 0 1 1 0 0 1 0 SP
ST がスタートビット(値は 0)、SP がストップビット(値は 1)
あいだの 8 個が 1 文字分のデータ
受け取る側は、ST を見つけたところから数え始めればよいことになります。文字が来るたびにタイミングを取り直すので、いつ届くか分からないデータに向きます。
区切りをどう知らせるか
調歩同期 … 1文字ごとにスタートビットとストップビットではさみ、そのたびにタイミングを取り直す。装置が簡単で、低速の通信で使う
キャラクター同期(SYN 同期) … 先頭に決まった符号(SYN)を並べて合図し、そのあとは文字を続けて送る。区切りの単位は文字
フラグ同期(フレーム同期) … 決まった並び(フラグ)でひとまとまりの前後を区切る。中身は文字でなくてよく、ビットの並びのまま送れる
文字ごとに取り直すのが調歩同期、いちど合わせたら続けて送るのが SYN 同期とフラグ同期です。 印が少ないほど、実際のデータに使える割合が増えます。
練習
キーボードからの入力のように、いつ届くか分からず、1文字ずつ間が空くデータを送ります。 向いている方式はどれですか。
まとめ
この回で持ち帰ること
1. 向きは単方向・半二重・全二重。分かれ目は「両方向か」と「同時か」の2つ
2. 変調は波の高さ=AM、細かさ=FM、ずれ=PM。PCM は波を標本化・量子化・符号化して数に直す
3. 多重化は何で分けるか。周波数=FDM、時間=TDM、波長=WDM、符号=CDM
4. 誤り対策は検出だけ(パリティ・チェックサム・CRC)と訂正までできる(ハミング符号。総称が ECC)
5. 同期は、土台がビット同期。区切りは文字ごとに取り直す調歩同期と、続けて送る SYN 同期・フラグ同期
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この記事で引用した資料
いずれも独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表したものです。IPAは公表済みの試験問題について、教育目的での使用に許諾および使用料を不要としていますが、著作権は放棄していません。本記事では問題文を改変せずに引用しています。
本文の例(テレビ放送・トランシーバー・電話のたとえ、多重化の図、調歩同期の並び)と練習問題は、すべて当サイトが説明のために作ったものです。

