科目Aの確率と統計は、数えることと式にあてはめることでできています。 公式を覚えるより、何を数えているかが分かるほうが速く解けます。 この回では、順列と組合せ、確率の足し算と掛け算、期待値、そして平均・分散までを順に確かめます。シラバスには各種の確率分布やマルコフ過程も挙がっていますが、計算で問われるのはここに挙げた道具です。
出典:基本情報技術者試験 シラバス Ver9.2 大分類1 基礎理論/中分類1 基礎理論/2. 応用数学
(1)確率と統計 ① 確率
順列,組合せ,場合の数,確率とその基本定理,確率分布と期待値,マルコフ過程のあらましを理解する。
(1)確率と統計 ② 統計
度数分布表,ヒストグラム,箱ひげ図,代表値,ばらつき,相関関係,回帰直線など,統計分析の手法を理解する。
順列と組合せ ── 並び順を区別するかどうか
5人の中から3人を選びます。このとき2つの数え方があります。
5人から3人を選ぶ 順列(並べる) 5 × 4 × 3 = 60 通り 組合せ(選ぶ) 60 ÷ (3 × 2 × 1) = 10 通り
並び順まで区別するなら60通り。顔ぶれだけを見るなら、同じ3人の並べ方 3×2×1=6 通りを1つと数えるので 10 通りです。
「誰が1位・2位・3位か」を区別するのが順列、「どの3人か」だけを見るのが組合せです。 組合せは、順列を並べ替えの数で割ると出ます。 3×2×1 のように1ずつ減らして掛けたものを階乗といい、3! と書きます。試験では順列を ₅P₃、組合せを ₅C₃ と書くこともあります。
練習
6人の中から、委員を2人選びます。何通りの選び方がありますか。
確率の足し算と掛け算
10本のくじに当たりが2本あります。1本引いて戻さずにもう1本引きます。
くじ10本のうち当たり2本。1本引いて、戻さずにもう1本引く 1回目が当たる 2/10 = 0.2 2回とも当たる 2/10 × 1/9 = 約 0.022 少なくとも1回当たる 1 − (8/10 × 7/9) = 約 0.378
2回とも当たるのは掛け算。「少なくとも1回」は、1 から「1回も当たらない確率」を引くと速く出ます。
3行目の 8/10 と 7/9 は、はずれのほうの数です。 当たりが2本なのではずれは8本。1本目がはずれる確率は 8/10、 そのあと残り9本のうちはずれは7本なので 7/9。これを掛けたものが「1回も当たらない確率」で、 1 から引くと「少なくとも1回当たる」になります。 ある出来事以外のすべてを余事象といいます。
足すのか、掛けるのか
掛ける(乗法定理) … 「A のあとに B も」と、続けて起きるとき
足す(加法定理) … 「A または B」と、同時には起きない出来事のどちらかのとき
足す例:サイコロで「1 または 2 が出る」確率は 1/6 + 1/6 = 2/6。 1 と 2 は同時に出ないので、そのまま足せます。
2回目の確率が 2/10 ではなく 1/9 になっているのは、1本目を戻していないからです。 このように前の結果によって変わる確率を、条件付き確率といいます。
期待値 ── 1回あたり、平均していくら
当たりが 1/10 で、当たると5,000円もらえるくじがあります。1回引くと平均でいくらになるかが期待値です。
当たり(確率 0.1) 5,000 円 × 0.1 = 500
はずれ(確率 0.9) 0 円 × 0.9 = 0
─────
期待値 500 円
期待値は、それぞれの値 × その確率を全部足したものです。参加費が500円より高ければ、続けるほど損をします。
計算より先に来るのは、起こりうる場合をもれなく並べることです。 並べ落とすと確率の合計が 1 にならないので、そこで気づけます。
練習
正しく作られたサイコロを1回振ったとき、出る目の期待値はいくつですか。
代表値 ── 平均値・中央値・最頻値
ここからは統計です。集めた数値を1つの値で代表させるのが代表値で、3種類あります。
点数 40, 50, 60, 60, 90 平均値 (40+50+60+60+90) ÷ 5 = 60 中央値 小さい順に並べた真ん中 = 60 最頻値 いちばん多く出た値 = 60
この例では3つとも 60 ですが、いつも一致するわけではありません。次の段落で、割れる例を見ます。
たとえば点数が 40, 50, 60, 60, 900 だったとします。平均値は 222 に跳ね上がりますが、 中央値は 60 のままです。 極端な値があるときは、平均値より中央値のほうが実感に近くなります。
3つが割れる例も見ておきます。20, 20, 60, 70, 80 なら、平均値は 50、 中央値は 60、最頻値は2回出ている 20 です。 最頻値はいちばん多く出た値なので、真ん中とは限りません。
ばらつき ── 分散と標準偏差
代表値が同じでも、散らばり方は違います。それを表すのが分散と標準偏差です。 さきほどの 40, 50, 60, 60, 90(平均 60)で計算します。
点数 40, 50, 60, 60, 90(平均 60) 平均との差 −20, −10, 0, 0, +30 2 乗 400, 100, 0, 0, 900 分散 (400+100+0+0+900) ÷ 5 = 280 標準偏差 √280 = 約 16.7
差をそのまま足すと 0 になってしまうので、2乗してから平均します。それが分散、平方根を取ると標準偏差です。
差をそのまま足すと −20 − 10 + 0 + 0 + 30 = 0 です。 平均は差し引きが釣り合う位置なので、どんなデータでも必ず 0 になります。だから2乗します。
標準偏差は、もとの数値と同じ単位に戻したばらつきです。点数のデータなら「およそ17点ぶん散らばっている」と読めます。
⚠️ データの散らばりは図でも表します。度数分布表は値の範囲ごとの個数を並べた表、 ヒストグラムはそれを棒にした図、箱ひげ図は、小さい順に並べて4等分した区切り(四分位数)を使い、真ん中の半分を箱、残りをひげで表した図です。
2つの量の関係 ── 相関
2つの量に関係があるかを表すのが相関係数で、−1 から +1 の値を取ります。
| 相関係数 | 散布図の見え方 | 例と注意 |
|---|---|---|
| +1 に近い | 右上がりの直線に近い | 身長と体重。片方が増えると、もう片方も増える |
| 0 に近い | ばらばらに散らばる | 直線でない関係(山なりなど)は、あっても 0 に近くなる |
| −1 に近い | 右下がりの直線に近い | 気温とおでんの売上。片方が増えると、もう片方は減る |
先に、ひとつ予想してみましょう
2つの量の相関係数が 0.9 でした。このことから言えるのは、次のどれですか。
相関は「一緒に動く」ことしか示さず、片方がもう片方の原因だとは言えません。 第3の要因が両方を動かしている場合があり、これを擬似相関といいます。 点で描いた図を散布図といい、相関係数はその点が直線にどれだけ沿っているかを表します。
⚠️ 2つの量の関係を直線の式で表すのが回帰直線です。 予測に使う側を説明変数、予測される側を目的変数といいます。
まとめ
この回で持ち帰ること
1. 順列は並び順を区別する。組合せは順列を並べ替えの数で割る
2. 続けて起きるなら掛ける、どちらかなら足す。「少なくとも1回」は 1 −(1回も起きない確率)
3. 期待値=値 × 確率 の合計。実際に出る値と一致しなくてよい
4. 代表値は平均値・中央値・最頻値。極端な値があるときは中央値
5. ばらつきは分散(差の2乗の平均)と標準偏差(その平方根)
6. 相関は因果ではない。見かけの相関は擬似相関
次に読む
この記事で引用した資料
いずれも独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表したものです。IPAは公表済みの試験問題について、教育目的での使用に許諾および使用料を不要としていますが、著作権は放棄していません。本記事では問題文を改変せずに引用しています。
本文の例(5人の並び方、くじ、サイコロ、テストの点数)と練習問題は、すべて当サイトが説明のために作ったものです。
