令和7年度 基本情報技術者試験 科目B 問6の解説|バックアップとRPO・RTO

基本情報技術者試験

令和7年度 科目B 公開問題 問6情報セキュリティ・バックアップ・RPO/RTO最終更新 2026-09-04

令和7年度の科目B、その6問目です。プログラムは1行も出てきません。読むのはバックアップの取り方を並べた箇条書きと、それについての質疑応答の表だけ。埋めるのは3つの空欄で、訊かれているのはいつまで戻すか・何時間かかるか・誰が承認したかの3つ。1つ目は日付をさかのぼるだけ、2つ目は時間の足し算、3つ目は原文どうしをつなぐだけです。

出題

まず原文のまま読んでみてください。言葉の意味は次の節にまとめてありますので、読めなくてもここでは問題ありません。

出典:令和7年度 基本情報技術者試験 科目B 公開問題 問6

A 社は従業員200 名の電子機器メーカーである。東京に本社があり,新潟に工場がある。

A 社では,ファイルサーバを図1 のように運用している。

・ファイルサーバは本社と工場のサーバルームに設置している。

・ファイルサーバは,磁気テープを使用してファイルのバックアップを取得している。

・土曜日の午前2 時からフルバックアップを取得し,翌週の火曜日と木曜日の午前2 時から増分バックアップを取得している。

・情報システム部の担当者は毎週月曜日,火曜日,木曜日の朝10 時頃,バックアップジョブの実行結果の確認と磁気テープの交換を行い,磁気テープは耐火金庫に保管している。

・磁気テープには上書きモードでバックアップを取得し,1 か月分の磁気テープを世代管理している。

・これまで,フルバックアップからのリストアには平均して4 時間,1 回の増分バックアップからは平均して0.25 時間掛かっている。

・A 社はICT 継続のための試験を実施しており,ファイルサーバも試験対象である。

注記 事業影響度分析の結果に基づき,ファイルサーバは,72 時間の目標復旧時点(RPO)と120 時間の目標復旧時間(RTO)が要求事項として定められている。

図1 A 社のファイルサーバの運用

A 社はISMS 認証を取得しており,最高情報セキュリティ責任者(CISO)を中心に情報セキュリティに取り組み,定期的に,情報セキュリティリスクアセスメントを行っている。今般,ISMS 認証基準がJIS Q 27001:2023 に改正されたことを受け,情報セキュリティリーダーのB さんは,新基準への移行審査に向けて準備することになった。改正によって新たに追加された情報セキュリティ管理策について,B さんは情報システム部の担当者に取組状況を確認し,その評価結果を表1 にまとめた。

表1 B さんの評価結果(抜粋)

項番 情報セキュリティ管理策 評価結果
1 (事業継続のためのICT の備え)事業継続の目的及びICT 継続の要求事項に基づいて,ICT の備えを計画し,実施し,維持し,試験しなければならない。 実施している

B さんは,移行審査前の内部監査で,内部監査室から表1 の項番1 に関するファイルサーバの運用について何点か質問を受け,表2 のとおり回答した。

表2 内部監査室へのB さんの回答(抜粋)

項番 B さんの回答
1 例えば,金曜日の正午に障害が発生した場合,少なくとも a1 の時点のデータは復元しなければならない。
2 例えば,木曜日の正午に障害が発生し,ファイルサーバの全データが消失したとすると,バックアップからのリストアには a2 時間掛かると予想される。
3 ICT 継続の計画書は,a3 が承認している。

設問

表2 中の a1 ~ a3 に入れる字句の適切な組合せを,a に関する解答群の中から選べ。

a に関する解答群

a1 a2 a3
ア 月曜日の正午 4.25 CISO
イ 月曜日の正午 4.25 情報システム部の担当者
ウ 月曜日の正午 4.25 内部監査室長
エ 月曜日の正午 4.50 CISO
オ 月曜日の正午 4.50 情報システム部の担当者
カ 火曜日の正午 4.25 情報システム部の担当者
キ 火曜日の正午 4.25 内部監査室長
ク 火曜日の正午 4.50 CISO
ケ 火曜日の正午 4.50 情報システム部の担当者
コ 火曜日の正午 4.50 内部監査室長
答えだけ先に見る

正解は ク。ただし、この記事は解答群を見ずに3つを決める順で進みます。先に答えまで見てしまうと、組み立てをなぞるだけになります。

この問題に出てくる言葉

読めない言葉があったときだけ開いてください。先に全部読む必要はありません。

この問題に出てくる言葉 9コ をひらく
言葉 意味
バックアップ データの控えを別に取っておくこと。この問題では磁気テープに取っています
フルバックアップ まるごと全部の控えを取る取り方。時間はかかりますが、これ1本で全体が戻せます
増分バックアップ 前回のバックアップから増えた(変わった)ぶんだけの控えを取る取り方。1本が小さいので速い代わりに、戻すときはフル1本+そのあとの増分を全部、取った順に重ねる必要があります
ICT 継続 障害が起きても、IT の仕組みを止めない(または早く戻す)ようにしておくこと。その手順を書いたものが、a3 に出てくる「ICT 継続の計画書」です
リストア 控えから元に戻すこと。この問題では、その所要時間を訊かれます
RPO(目標復旧時点) 「いつの時点まで戻せればよいか」の決め。72時間なら「障害の72時間前の状態までは戻せること」を求めています
RTO(目標復旧時間) 「どれだけの時間で戻し終えればよいか」の決め。この問題では使いません(訊かれているのは「実際に何時間かかるか」であって、上限の120時間ではありません)
CISO 最高情報セキュリティ責任者。原文に「CISO を中心に情報セキュリティに取り組み」とあるとおり、この会社の情報セキュリティのいちばん上の人です
内部監査室 社内のやり方が決まりどおりかを点検する部署。この問題では質問する側で、B さんが答えています

ほかにも上書きモード・設置場所(本社と工場)・ICT 継続の試験・リスクアセスメント・表1 の評価結果が出てきますが、3つの空欄のどれにも使いません。耐火金庫と1か月分の世代管理も答えの数字は変えませんが、この2つがあるおかげで木曜の障害のときに5日前の土曜のテープがまだ残っていると言えます。

増分バックアップは、前の1本にぶら下がっている

ここだけ先に押さえておきます。使うのは a2(何時間かかるか)のときだけで、次の a1 には出てきません。

※ 原文は「土曜日の…フルバックアップを取得し,翌週の火曜日と木曜日の…増分バックアップ」。土曜のフルのあとに来る火曜・木曜、という並びなので、上の表の順になります。担当者が確認するのは「月・火・木」の朝10時ですが、これは取った結果を見に行く日で、取る日ではありません(月曜に見るのは土曜のフルの結果)。月曜を数に入れないこと。

取るのは週に3回だけです。ここで大事なのは、増分が持っているのは「前回のバックアップから増えたぶん」だけだということです。「前回」がいつかを追うと、こうなります。

それぞれのバックアップが持っている範囲

土曜のフル … その時点のまるごと全部

火曜の増分 … 前回は土曜のフル。だから 土曜→火曜 の変更ぶん

木曜の増分 … 前回は火曜の増分。だから 火曜→木曜 の変更ぶんだけ

木曜の増分には、土曜から火曜までの変更が入っていません。だから土曜のフル+火曜の増分+木曜の増分を、この順に重ねないと元に戻りません ── 1本でも飛ばすと、その期間の変更が抜け落ちます。

空欄に入るものを決める

3つの空欄は別々のことを訊いています。表2の3行はそれぞれ独立した「例えば」なので、a1 は金曜日、a2 は木曜日と障害の曜日も違います。1つずつ、表2のその行と、根拠になる原文を並べて決めます。

空欄 a1 ── いつの時点まで戻せばよいか

表2 項番1 と、図1 の注記(原文)

例えば,金曜日の正午に障害が発生した場合,少なくとも a1 の時点のデータは復元しなければならない。

注記 事業影響度分析の結果に基づき,ファイルサーバは,72 時間の目標復旧時点(RPO)と120 時間の目標復旧時間(RTO)が要求事項として定められている。

「目標復旧時点」は、戻す先の時点のことです。ただし障害はいつ起きるか分からないので、その時点を「◯月◯日」ではなく「障害から何時間前まで」という幅で決めます ── それが 72時間です。つまり「障害の72時間前の状態までは復元できること」。あとは金曜日の正午からさかのぼって数えるだけです(設問の「少なくとも」は、ここまでは戻せることという下限の意味です)。

金曜日の正午から、72時間さかのぼる

※ 太枠=答えになる行。

1日 = 24時間なので、72時間 = 3日

さかのぼった時間 その時点
0 時間(障害が発生) 金曜日の正午
24 時間前 木曜日の正午
48 時間前 水曜日の正午
72 時間前 火曜日の正午

正午から正午へ1日ずつ戻ります。72時間前は火曜日の正午。ここまでのデータは復元できなければなりません。

72 を「4日」と数えると月曜日の正午になります ── 1日ぶん行きすぎです。

a1 に入るもの

火曜日の正午

空欄 a2 ── 戻すのに何時間かかるか

表2 項番2 と、図1 のリストアの行(原文)

例えば,木曜日の正午に障害が発生し,ファイルサーバの全データが消失したとすると,バックアップからのリストアには a2 時間掛かると予想される。

・これまで,フルバックアップからのリストアには平均して4 時間,1 回の増分バックアップからは平均して0.25 時間掛かっている。

今度は木曜日の正午で、しかも全データが消失 ── まるごと戻すので、土台になるフルが要ります。そのうえに、そのあとの増分を順に重ねます。1週間に並べて、障害の時刻より前に取り終えているものを拾います。

木曜日の正午までに、取ってあるバックアップ

※ 太枠=この障害で使うもの。灰=まだ来ていない日(金曜)。印の無い日は、そもそもバックアップを取らない日です。

障害の時刻に線を引いて、それより前のものだけを拾う

曜日 午前2時に取るもの 木曜正午まで
に取れているか
土 フルバックアップ 取れている
(4時間)
日 - -
月 - -
火 増分バックアップ 取れている
(0.25時間)
水 - -
木 増分バックアップ 取れている
(0.25時間)
金 - まだ来ていない

取るのは午前2時なので、木曜の増分も正午には取り終えています。金曜はまだ来ていません。

フル1本+増分2本。4 + 0.25 + 0.25 = 4.50 時間です。

a2 に入るもの

フル 4 + 増分 0.25 + 増分 0.25 = 4.50 時間

空欄 a3 ── 計画書を承認するのは誰か

表2 項番3 と、根拠になる原文

ICT 継続の計画書は,a3 が承認している。

(表1 項番1 の情報セキュリティ管理策)(事業継続のためのICT の備え)事業継続の目的及びICT 継続の要求事項に基づいて,ICT の備えを計画し,実施し,維持し,試験しなければならない。

A 社はISMS 認証を取得しており,最高情報セキュリティ責任者(CISO)を中心に情報セキュリティに取り組み,…

・情報システム部の担当者は毎週月曜日,火曜日,木曜日の朝10 時頃,バックアップジョブの実行結果の確認と磁気テープの交換を行い,…

B さんは,移行審査前の内部監査で,内部監査室から表1 の項番1 に関するファイルサーバの運用について何点か質問を受け,…

ここは原文をつなぐだけで決まります。ICT 継続の計画は、表1 が「情報セキュリティ管理策」として挙げているもの ── つまりこの会社の情報セキュリティの取り組みの一部です。そして原文は、その取り組みが誰を中心に回っているかを1か所だけ名指ししています。

原文が、3人をどう置いているか

情報システム部の担当者 … 図1でバックアップを動かしている人(実行結果の確認と磁気テープの交換)。しかも B さんが取組状況を確認した相手=取り組みを見られる側です

内部監査室 … B さんに質問した側。できているかを外から点検する役で、原文でも承認ではなく質問をしています

CISO … 「最高情報セキュリティ責任者(CISO)を中心に情報セキュリティに取り組み」。情報セキュリティの取り組みの中心だと原文が名指ししているただ一人です

ICT 継続の計画は情報セキュリティ管理策の1つ。その取り組みの中心は CISO。だから計画書を承認するのは CISO です。解答群の「内部監査室長」は、上でいう内部監査室の長にあたります。

a3 に入るもの

CISO

ここで初めて解答群を見る

火曜日の正午・4.50・CISO。解答群でこの組合せは ク ひとつだけです。

答え合わせ

正解は ク

a1 火曜日の正午 … 金曜日の正午の 72時間前

a2 4.50 … フル 4 + 増分 0.25 × 2

a3 CISO … 情報セキュリティのいちばん上の責任者

ほかの9つは、a1 で「月曜日の正午」(72時間を4日と数えた。正しくは3日)、a2 で「4.25」(最新の増分1本だけ戻せばよいと思ったか、木曜の増分がまだ無いと思ったか。どちらでも 4 + 0.25 になります)、a3 で「情報システム部の担当者」「内部監査室長」(作業する側・点検する側を承認者にした)のどれかを含みます。3つのうち1つでも外すと落ちます。

「RPO・RTO」の問題を見分ける

「◯時間の目標復旧時点」と書いてあったら、それは日付を引き算しろという合図です。次にこの形が出たら、上でやったことをそのまま当てはめれば解けます。

本番の手順 ── バックアップと復旧の問題が出たら

  1. 「時点」か「時間」かを、言葉で見分ける。目標復旧時点=どこまで戻すか(日付を数える)。目標復旧時間=どれだけで戻すか(所要時間と比べる)。訊かれていないほうは使いません。
  2. 障害の時刻に線を引いて、それより前のものだけを拾う。フル1本+そのあとの増分を全部。まだ取っていないぶんを数えないのがいちばんの落とし穴です。

あとは、この形にいつも付いてくるくせを1つ知っておけば迷いません。

この形のくせ どうするか
答えに効かない条件が必ず混ざる 上書きモード・設置場所・ICT 継続の試験・表1 の評価結果 ── どれも数字を変えません。拾うのは「いつ」「何を」「どれだけの時間で」の3つだけです

次に読む

この問題でどこに手間取ったかで、行き先が変わります。

この記事で引用した資料

いずれも独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表したものです。IPAは公表済みの試験問題について、教育目的での使用に許諾および使用料を不要としていますが、著作権は放棄していません。本記事では問題文を改変せずに引用しています。

Copied title and URL