この記事は、PD-S(システム)試験(仮称)科目B 教科書シリーズの最終節、小項目4-4「開発プラットフォームの活用,システムの運用管理,インフラストラクチャの管理,サイト信頼性エンジニアリング(SRE)」です。開発を支える基盤(PaaS・Git・SBOM)の選び方から、社会を支えるシステムの安定運用、そして開発と運用の対立を解く新しい仕事の形SREまで——第4章の締めくくりにふさわしい「作り続けながら、安定して動かし続ける」ための節です。技能の例6つを全展開し、前提知識ゼロから解説します。
この節の全体像 — 開発の基盤・運用の基本・SRE
技能1〜3:開発プラットフォーム — PaaS・Git・SBOMをおさえる
開発プラットフォームに関する技術動向を調査して,メリットやデメリット,技術上の限界点を見極め蓄積するスキル/
適切な開発プラットフォームを取捨選択して提案するスキル/
開発プラットフォーム(PaaS,Git,SBOM など)をプロジェクト特性に合わせてテーラリングし,プロジェクト適用を推進するスキル
開発プラットフォームとは、開発チームの仕事を支える基盤・ツール群のこと。4-3の「手法」が進め方の話なら、こちらは道具立ての話です。「調査→取捨選択→テーラリング」という技能の流れは4-3と全く同じ構図なので、ここではシラバス案が名指しする3つの道具を確実に理解します。
図1:シラバス案が名指しする開発プラットフォーム3点 — PaaS・Git・SBOM
なぜSBOMが名指しされるほど重要になったのか。現代のソフトウェアは大量のOSS部品の組み合わせでできており、ある部品に重大な脆弱性が見つかったとき、「うちのどのシステムがその部品を使っているか」が分からなければ対応のしようがないからです。SBOMがあれば影響箇所を即座に特定して更新でき、加えて1-5で学んだOSSライセンスの管理にもそのまま使えます。4-3のDevSecOps(セキュリティを最初から)を支える台帳、と位置づけると1本につながります。
技能4・技能5:安定運用と利用者支援
社会や企業活動を支える基盤となるシステムを安定して維持・運用するスキル
「社会や企業活動を支える基盤」という言葉が示すとおり、対象は止まると広く影響が出るシステムです。2-3で学んだ運用の型(構成・変更管理/監視としきい値/障害対応5ステップ/保守計画)が、ネットワークに限らずシステム全般・インフラ全般にそのまま適用されます。加えてシステム運用では、ソフトウェア更新(パッチ)の計画適用、バックアップと復旧試験、処理能力の余裕の監視(キャパシティ管理)が定番の仕事になります。
システムが円滑に動作することを保証し,利用者がシステムを効果的に使用できるようにする活動を計画・実行・改善するスキル
見落としがちな視点です——システムは「動いている」だけでは足りず、利用者が使えて初めて価値になります。問い合わせ・困りごとを受け付ける窓口、操作方法の案内やFAQの整備、利用状況から使いにくさを見つけて改善につなげる活動。技能の例が「計画・実行・改善」と書くとおり、窓口対応の記録は「よくある質問=分かりにくい機能」という改善のヒントの山です。
技能6:SRE — 開発の速さと運用の安定を両立させる仕組み
SRE プロセスを導入して,開発と運用が協力し,リリースサイクルの向上とサービスの安定を目指すスキル
背景には古典的な対立があります。開発は「新機能を早く出したい(変化させたい)」、運用は「安定させたい(変化させたくない)」——放っておくと綱引きになる両者を、SREは数値の仕組みで協力させます。その中核が次の3点セットです。
図2:SREの核心 — SLI/SLO・エラーバジェット・トイル削減
混同しやすい概念の整理
| 紛らわしいペア | 違いの核心 |
|---|---|
| 開発手法(4-3) ⇔ 開発プラットフォーム(4-4) | 手法=進め方(アジャイル・CI/CD)。プラットフォーム=道具立て(PaaS・Git・SBOM)。どちらも「調査→取捨選択→テーラリング」で選ぶ |
| Git ⇔ SBOM | Git=自分たちが書いたコードの変更履歴を管理。SBOM=取り込んだ部品(OSS等)の一覧を管理。守備範囲が「自作」か「部品」か |
| SLI ⇔ SLO | SLI=ものさし(何を測るか)。SLO=目標値(どこを狙うか)。ものさしが先、目標が後 |
| SLO100% ⇔ エラーバジェット | 100%は目指さない(費用が際限なく、リリース不能になる)。SLOとの差分を予算として使い、攻め(リリース)と守り(安定化)を数値で切り替える |
| 従来の運用 ⇔ SRE | 従来=手順と人手で守る(開発と分離・変化を避けがち)。SRE=計測・自動化・目標管理で守る(開発と協力し、変化と安定を両立) |
確認クイズ(4問)
この節の理解度チェックです(当サイト独自の予想問題。公式の出題ではありません)。
SBOM(ソフトウェア部品表)を整備しておく主な利点として、最も適切なものはどれか。
バージョン管理システム(Git)が複数人での開発を支える仕組みの説明として、最も適切なものはどれか。
SLO(サービスレベル目標)を99.9%と定めたサービスにおける「エラーバジェット」の考え方として、最も適切なものはどれか。
SREプロセスを導入する目的として、シラバス案の趣旨に最も合うものはどれか。
まとめ:小項目4-4で身につけること — そしてシリーズ完結
- 開発プラットフォームは調査→取捨選択→テーラリング(4-3と同じ構図)。名指しの3点=PaaS(実行基盤を借りる)・Git(変更履歴とブランチ)・SBOM(部品表=脆弱性即応とライセンス管理)。
- 安定運用は2-3の型(構成/変更管理・監視・障害対応・保守)をシステム全般へ。利用者が効果的に使えるようにする活動(窓口・FAQ・改善)まで含めて運用。
- SRE=計測・自動化・目標管理で信頼性を作る:SLI(ものさし)→SLO(目標)→エラーバジェット(攻守の切り替えを数値で)→トイル削減(自動化)。目的はリリースの速さと安定の両立。
これでPD-S 科目B 教科書シリーズ全15節(1-1〜4-4)が完結です。第1章「要件とアーキテクチャ」→第2章「ネットワーク」→第3章「フィジカルコンピューティング」→第4章「開発と運用」——貫いていたのは、要件と制約から根拠を持ってトレードオフを判断するという1本の筋でした。区分ハブから全節を見渡して、章をまたいだつながり(非機能要件→稼働率→SLO、レビュー→シフトレフト、など)を確認すると、理解が立体になります。正式シラバス公開時には全記事を更新します。
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出典(一次情報)
- IPA「プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験(仮称)科目B シラバス(案 Ver0.2)」大項目4・小項目4-4(2026年7月31日更新)[link]。本文中の「技能の例」引用は同シラバス案からの原文引用です。
- IPA「情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 出題範囲等の改定案 Ver.1.0」(2026年3月)
※試験名は仮称、内容は検討段階の案です。試験の形式・時間・配点・合格基準は未公表のため本記事では扱いません。技術解説(PaaS・Git・SBOM・SRE・SLI/SLO・エラーバジェットなど)は一般に確立した知識に基づく当サイトの解説で、シラバスの記載そのものではありません。確認クイズは当サイト独自の予想問題です。正式シラバス公開時に内容を更新します。

